絵について思ったこと

これは【その2】ドリコム Advent Calendar 2015 - Adventarの14日目の記事です。

13日目の記事はちゃんまきさんの

きれいで分かりやすい!心を動かすプレゼン用パワーポイントを作る方法 - Makiko BLOG

です。

【その1】ドリコム Advent Calendar 2015 - Adventarもありますのでどうぞ。

・はじめまして

テラと申します。

ドリコムでグラフィックの制作をしております。

いつも丹精込めて絵を描いていますが

時々この行為は何なのだと考えることもあるで

そんな話をしようと思います。

 

・これはパイプではない

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引用元

http://f.hatena.ne.jp/shunterai/20130806231627

 

上の絵は1929年にベルギーの画家ルネ・マグリットが発表した

「イメージの裏切り」というタイトルの絵です。

なんとキャンバスの中に字が書いてあります。

サインにしては大きすぎるし丁寧です。

 鑑賞者へのメッセージなのか

 

「これはパイプではない」

 

と書いてあるらしいのです。

 

……?

 

いや、パイプでしょ。と思うんですが

メタ的に考えれば確かに「パイプ」ではなく「パイプの絵」です。

しかし作品自身がそれを宣言するなんて正直すぎます。

もっと言えば絵画のルールに反するように感じます。

ですが、

「これはパイプの絵である」と書かずに

「これはパイプではない」と書くところがミソで

これはパイプではない上に

もしかすると「パイプの絵」ですらないのかもしれないと

思ってしまったりもします。

私たちがイメージする絵とはだいぶ違うし

そもそも文字で説明が書き込まれているからです。

 

この作品に関する詳しい考察は

フランスの思想家ミッシェル・フーコー

「これはパイプではない」という本に詳しく書かれているそうです。

興味のある方は読んでみるといいのではないでしょうか。

そして面白かったならその本を

私に貸してみるのもいいのではないでしょうか。

 

ところで冒頭に申したように

私はグラフィックを制作する人間です。

批評よりも実践かと思い

簡単なものではありますが真似して作ってみました

 

・これは電気スタンドではない

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どうですか。

 

日本語になるとまた違った味わいがあります。

 

この電気スタンドは

今記事を書いている私の机にのっている

どこぞのリサイクルショップで買った

ちょっとレトロな愛用品です。

 

一生懸命電気スタンドを見て

そっくりに描いた後で

「これは電気スタンドではない」と。

なかなか切ない気持ちになります。

今までの努力は何だったのかと。

 

でも出来上がった絵を見るとなかなか面白く

手の込んだ商品広告のような不思議な雰囲気を持っています。

これはちょっと病みつきになりそう。

ということで

調子に乗ってもう一個描いてみました。

 

・これは毛ではない

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変化球いってみました。

この遊び結構色々できます。

 

いわれなくても毛じゃないだろ。

適当に一本線を引いただけじゃないか。

という感じですが

それなら毛を描くのに何か不足があるのかといえば

まあそれなりに十分毛の特徴はとらえてるともいえます。

毛を一本だけ画面に描くなんてことはあまりないので

毛に見えるかどうかは見る人のイマジネーションに

ゆだねられてると言った感じです。 

 

 

・見る人のイマジネーション 

 

毛を描いてみて気がついたんですが

描かれた物が何に見えるかというのは

描いた人よりも見る人の問題で

絵は最終的には見る人次第のもの

ということになります。

 

物理的には絵とは

意図的に配置された色で構成された面

というくらいの物で

描かれた対象物と比べれば

非常に情報量の少ない抽象的なものです。

 

見る人がその少ない情報から

様々な意味や価値を補強して

頭の中で対象物を再構築しているのです。

 

このような見る人の再構築の作業は

文化や流行によってある程度様式化されて共有されています。

だから現代に生きる私たちには

浮世絵や水墨画を十分には味わえなかったりします。

作法が大切なんです。

 

•お約束と掟破り

 

見る人と描く人が共通のルールを守って

イメージを共有することで

絵は豊かな表現力を持ちます。

冒頭で紹介したマグリットの絵は

あえてそのルールを破って

一段メタ的なエンターテイメントとして

私たちにある種のスリルを味あわせてくれます。

 

日本のマンガやアニメは独特の表現手法を発展させて

いくつものお約束を生み出してきました。

西洋絵画でも何百年もの時間をかけて

お約束的な表現に磨きをかけてきました。

 

高度な作法を身につけて

完成度の高い絵を楽しむのもいいものですが

たまには掟破りのスリルを味わうのも

また楽しいものです。

 

以上

かなりとりとめのない終わりを迎えた

絵についての記事でした。

 

 

15日目はyu_0105さんの記事です。

 

それではごきげんよう。