80年代風の絵を描いてみる

・みなさんこんにちは

ドリコムでデザイナーをやっているテラと申します。

普段は2D、3D問わず背景を担当することが多いです。

ですが今回はせっかくのクリスマスなので

イラストを描いてみようと思います。

 

・80年代風デザイン

みなさん突然ですが私最近気がつきました。

80年代風のデザイン流行ってますよね。

 

……………。

いや、流行ってますって。

なんか雰囲気的に。

ということで今回私も挑戦することにしました。

80年代風のクリスマスのイラスト。

 

・リサーチ

80年代といえば今から約30年前。

実は私自身80年生まれなので原風景的な時代です。

しかし、いかんせん年少でしたので

今では当時のことなどほとんど覚えていません。

そこでちょっとネットの記事などでリサーチしました。

するとどうでしょう。

出るわ出るわ魅力的なパワーワードたち。

例えば

竹の子族、ツッパリ、超能力ブーム、

ロリコンブーム、アイドル黄金期、

ブコメブーム、サイバーパンク

テクノポップニューウェーブ

などなど。

明らかにそれ以前の時代ともそれ以降の時代とも違う

ユニークな時代感覚があります。

ただこの時代に、それ以降の日本の若者文化の方向性を大きく左右する

歴史的なある言葉も誕生しています。

それは「おたく」!

この言葉の起源や概念の話は今なお熱い議論の的ですが

80年代前半から中盤に今のような意味で使われるようになったらしいです。

いやー、80年代面白すぎます。眠れないです。

 

何かもう絵なんて描いてないでいろいろ調べたいような気分ですが

やると決めたことはやらなければ信用を失うばかり。

そろそろ描きます。

 

・ラフを描く

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というわけでラフです。

なんか色々語ってたわりにあまり80年代っぽくないような…。

まあphotoshopだから後からいくらでも調整できるし大丈夫でしょ。

ところでよく考えてみると衝撃的なことに気がつきました。

80年代ってphotoshopがない!

っていうか多分あまりパソコン使ってないし

当然ペンタブもない。

紙ですね。

恐ろしい。

失敗したら描きなおしてたんでしょうか。

すごい緊張感です。

ラフを描きながらいくつか80年代テイストみたいなことを

意識したので、軽く解説します。

その1、手足首が太く頭身が低い

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さっき少し触れましたが、当時はロリコンブームがありました。

キャラクターデザインの標準的な体型は

今よりも、またそれ以前の70年代よりも

若干頭身が低く、手足も太かったように思われます。

凹凸が少ないコロコロした体型が好まれたようです。

その2、ボリューミーな前髪と縦長の黒目

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まずもこもこしたボリューミーな前髪について。

これはもう当時流行っていたとしか言い様がないです。

80年代のアイドルも皆前髪がモワっとしてます。

イラストに落とし込むときには丸っこく表現することが多かったようです。

髪の描き方には結構分かりやすい世代の違いがあるように思います。

90年代には直線的で尖った髪の表現が多かったです。

最近は帯のような形状でひらひらさせた表現をよく見ます。

続いて縦長の黒目についてですが、

これはどうゆう経緯でこうなってるのかよくわかりませんが

80年代のイラストを見るとこうゆう表現多いです。

もともと漫画的なデフォルメではこの表現は昔からありました。

ディズニーキャラでも、手塚作品でもよく見られます。

ただ80年代のデザイン文化はそれ以前と少し違っていて

デフォルメ的な表現とリアリティを追求する表現を

意図的にミックスさせてポップな画面を構成する手法が流行します。

いわゆるSD(スーパーデフォルメ)なる概念もこの頃に登場します。

この辺のデザイン的な方法論は現在まで受け継がれています。

 

その3、大げさな表情のサブキャラ

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左のほうで驚いてるトナカイのような何かです。

前述したSD的表現は当時の漫画やアニメで

頻繁に、またかなり作為的に使われていました。

作中で人物の等身がシーンに合わせてころころ変わったり、

顔の造形がいきなり極端に省略されたりなどです。

このような表現の大胆さ、奔放さは

80年代キャラクターデザインの醍醐味といった感じがします。

以上

ラフ段階で盛り込んだ(つもりの)80年代テイストでした。

 

・線を整えてベース色着彩

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デッサンを調整しながら線を整え色をつけていきます。

サンタちゃんはより丸っこくしました。

トナカイくんの目は星にしてみました。

ちょっとそれっぽくなってきたんじゃないでしょうか。

80年代の色彩感覚は今より派手だったように感じます。

イラストに限らず、ファインアートやファッションの世界でも

めまいのするような色や柄をよく使っていたみたいです。

・影をつける

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影の色を置いていきます。

影も彩度を落とさず補色をのせていきます。

最近のイラストであればここからさらに

細かいニュアンスの調整入っていく段階だと思われますが、

今回はキャラクターの描画はこのくらいで終わりにします。

何しろphotoshopがない時代のイラストを再現しているわけで

レイヤーを使って半透明の着彩を施したり

全体にグラデーションをかけたり

ドロップシャドウや光彩を使ってしまったりしては

台無しなのです。

セル画調とかシルクスクリーン調こそが今回目指すべき表現なので

これ以上やることは特にありません。

・背景や文字を仕上げて完成

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今回一番楽しみにしていた工程です。

これぞ80年代的な背景と文字を作り完成です。

結構それっぽくなったんじゃないでしょうか。

さっき散々photoshopの機能を使わないみたいなことを言ったのに

パス引きまくりました。

すいません。

まず背景ですが、

派手な平面構成とうねうねした謎の模様を描きました。

私の知る限りではおそらくキース・ヘリングの影響かと思われますが

とにかく80年代のイラストの背景は落ち着きがなく

絵全体がガシャガシャと騒がしいと言った印象があったので

このような背景にしてみました。

そして文字の表現。

こちらは私の中で70年代から80年代の象徴のようになっている

チューブから出した絵の具みたいなテキスト表現です。

ネオン管を様式化したものではないかと勝手に想像しています。

最近の文字表現のモチーフではピクセルをよく目にします。

どのような媒体で文字を目にすることが多いかといった

日常的な体験がデザインに反映されるのだと思います。

 

・感想

以上

今回のチャレンジはこれで終了です。

この記事を読んだ方は薄々気づいているかもしれませんが、

今回私が楽しんだのはイラスト制作というよりも

それを通じて80年代に色々思いを巡らせることでした。

今から30年前の日本のサブカルチャー

若々しく、大胆で、自由奔放、

青春の輝きを持っていたのではないかと

ワクワクしながら色々な記事を読み、

作品を参照し、イラストを描きました。

軽い気持ちで始めたチャレンジでしたが、

個人的には予想外の充実感がありました。

今私がコンテツ制作をしている2017年が

30年後にそんな風に語られるといいなぁ

と遥か未来に対するポジティブな気持ちにもなりました。

 

今度は別のテーマでやってみてもいいかもしれません。

最後まで読んでくださった皆さん、ありがとうございました。

 

ところで80年代テイストは本当に流行ってるんでしょうか?

絵について思ったこと

これは【その2】ドリコム Advent Calendar 2015 - Adventarの14日目の記事です。

13日目の記事はちゃんまきさんの

きれいで分かりやすい!心を動かすプレゼン用パワーポイントを作る方法 - Makiko BLOG

です。

【その1】ドリコム Advent Calendar 2015 - Adventarもありますのでどうぞ。

・はじめまして

テラと申します。

ドリコムでグラフィックの制作をしております。

いつも丹精込めて絵を描いていますが

時々この行為は何なのだと考えることもあるで

そんな話をしようと思います。

 

・これはパイプではない

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引用元

http://f.hatena.ne.jp/shunterai/20130806231627

 

上の絵は1929年にベルギーの画家ルネ・マグリットが発表した

「イメージの裏切り」というタイトルの絵です。

なんとキャンバスの中に字が書いてあります。

サインにしては大きすぎるし丁寧です。

 鑑賞者へのメッセージなのか

 

「これはパイプではない」

 

と書いてあるらしいのです。

 

……?

 

いや、パイプでしょ。と思うんですが

メタ的に考えれば確かに「パイプ」ではなく「パイプの絵」です。

しかし作品自身がそれを宣言するなんて正直すぎます。

もっと言えば絵画のルールに反するように感じます。

ですが、

「これはパイプの絵である」と書かずに

「これはパイプではない」と書くところがミソで

これはパイプではない上に

もしかすると「パイプの絵」ですらないのかもしれないと

思ってしまったりもします。

私たちがイメージする絵とはだいぶ違うし

そもそも文字で説明が書き込まれているからです。

 

この作品に関する詳しい考察は

フランスの思想家ミッシェル・フーコー

「これはパイプではない」という本に詳しく書かれているそうです。

興味のある方は読んでみるといいのではないでしょうか。

そして面白かったならその本を

私に貸してみるのもいいのではないでしょうか。

 

ところで冒頭に申したように

私はグラフィックを制作する人間です。

批評よりも実践かと思い

簡単なものではありますが真似して作ってみました

 

・これは電気スタンドではない

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どうですか。

 

日本語になるとまた違った味わいがあります。

 

この電気スタンドは

今記事を書いている私の机にのっている

どこぞのリサイクルショップで買った

ちょっとレトロな愛用品です。

 

一生懸命電気スタンドを見て

そっくりに描いた後で

「これは電気スタンドではない」と。

なかなか切ない気持ちになります。

今までの努力は何だったのかと。

 

でも出来上がった絵を見るとなかなか面白く

手の込んだ商品広告のような不思議な雰囲気を持っています。

これはちょっと病みつきになりそう。

ということで

調子に乗ってもう一個描いてみました。

 

・これは毛ではない

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変化球いってみました。

この遊び結構色々できます。

 

いわれなくても毛じゃないだろ。

適当に一本線を引いただけじゃないか。

という感じですが

それなら毛を描くのに何か不足があるのかといえば

まあそれなりに十分毛の特徴はとらえてるともいえます。

毛を一本だけ画面に描くなんてことはあまりないので

毛に見えるかどうかは見る人のイマジネーションに

ゆだねられてると言った感じです。 

 

 

・見る人のイマジネーション 

 

毛を描いてみて気がついたんですが

描かれた物が何に見えるかというのは

描いた人よりも見る人の問題で

絵は最終的には見る人次第のもの

ということになります。

 

物理的には絵とは

意図的に配置された色で構成された面

というくらいの物で

描かれた対象物と比べれば

非常に情報量の少ない抽象的なものです。

 

見る人がその少ない情報から

様々な意味や価値を補強して

頭の中で対象物を再構築しているのです。

 

このような見る人の再構築の作業は

文化や流行によってある程度様式化されて共有されています。

だから現代に生きる私たちには

浮世絵や水墨画を十分には味わえなかったりします。

作法が大切なんです。

 

•お約束と掟破り

 

見る人と描く人が共通のルールを守って

イメージを共有することで

絵は豊かな表現力を持ちます。

冒頭で紹介したマグリットの絵は

あえてそのルールを破って

一段メタ的なエンターテイメントとして

私たちにある種のスリルを味あわせてくれます。

 

日本のマンガやアニメは独特の表現手法を発展させて

いくつものお約束を生み出してきました。

西洋絵画でも何百年もの時間をかけて

お約束的な表現に磨きをかけてきました。

 

高度な作法を身につけて

完成度の高い絵を楽しむのもいいものですが

たまには掟破りのスリルを味わうのも

また楽しいものです。

 

以上

かなりとりとめのない終わりを迎えた

絵についての記事でした。

 

 

15日目はyu_0105さんの記事です。

 

それではごきげんよう。